【ジュエリー豆知識】モース硬度ってなに?
突然ですが、皆さんは"モース硬度"という言葉をご存知ですか?
簡単にまとめてしまうと、「宝石の硬度=硬さ」を計る基準がモース硬度。
ダイヤモンドが硬いということはよく耳にするのではないでしょうか?
実はその硬さもグレードがあり、宝石ひとつひとつに決められているんです。
宝石ってどれも硬そうに見えますが、案外脆いものがあるって不思議じゃないですか?
"宝石の硬さ"を知ればジュエリーの選び方や扱い方もワンランクアップするはず!
そこで今回は、最もポピュラーなモース硬度についてご紹介していこうと思います!
モース硬度とは
モース硬度とは、主に「鉱物に対する硬さの尺度」の1つ。
モース硬度の「モース」は、この尺度を考え出したドイツの鉱物学者、「フリードリッヒ・モース」に由来しているそうです。
モースさんが考えたからモース硬度なんですね。簡単で覚えやすいですね!
(ここからちょっと難しくなります。)
硬さの尺度として、1から10までの10段階に分けてそれぞれの段階に対応する標準の鉱物が設定されています。
硬さの基準は「鉱物同士でひっかいたときに傷が付くか」であり、傷ついた方がモース硬度は低いとされます。
「たたいて壊れるかどうか」の堅牢さではありません。例えばモース硬度が最高の10段階目のダイヤモンドであっても衝撃には弱く、落としたり、ハンマーなどである一定の方向からたたくと簡単に割れてしまいます。
モース硬度は、一番硬いものが「10」、一番軟らかいものが「1」。
ちなみに爪のモース硬度は約2.5なので、爪で引っ掻いて削れる鉱物はモース硬度2.5以下と判断することができます。
宝石のモース硬度一覧
これはモース硬度のチャートです。1~10までの硬度と代表的な宝石をまとめています。ここからは各モース硬度の代表的な石の紹介と、同じ硬度の宝石について一緒に紹介していきます。
【モース硬度10】 ダイヤモンド
宝石の中で一番硬いものといえば?そうです、多くの人がご存知のダイヤモンドですね!
モース硬度のチャートでも最高硬度の10をダイヤモンドと定めています。ダイヤモンドはダイヤモンドでしか削ることができません。(モース硬度が同じだとお互いに傷がつくか、お互いに傷がつきません)
ただしモース硬度の数値が高いことと、頑丈かどうかは別なので注意してください。
ダイヤモンドには「劈開(へきかい)」という性質があるため、ある一定方向から力を加えると割れてしまいます。
【モース硬度9】 コランダム
ダイヤモンドに次いで硬度が高いのはコランダム(硬玉)です。コランダムと言われてもピンとくる人は少ないかもしれません。
コランダムからとれる宝石にはルビーやサファイアがあります。ルビーとサファイアって全然色が違うのに何故?と思われるかもしれませんが、色が変わる原因は含まれる成分の違いなんです。鉄(Fe)が多ければ青く、クロム(Cr)が多ければ赤くなります。
色味の定義が曖昧なので、ピンクサファイアは色の薄いルビーでもあるという関係性です。
モース硬度こそダイヤモンドより小さいですが、劈開性を持たないためダイヤモンドより割れにくく、科学的にも安定しているので薬品にも強いです。
時計の軸受けには合成ルビーが使用されていることが多いのも、摩耗に強い特性があるからなんですよ!
【モース硬度8】トパーズ
モース硬度8の代表的な宝石はトパーズです。同じく発色の良いスピネル、エメラルドもモース硬度8となっています。
ルビーやサファイヤに次いで硬い数値ですが、トパーズは衝撃に対する強度(靭性)が弱いため割れやすく、エメラルドも不純物が多いため割れやすいので注意が必要です。
スピネルは発色の鮮やかさと硬さから、昔はルビーと間違われていたこともあるくらいで、イギリスの大英帝国王冠にセットされている「黒太子のルビー」はレッドスピネルであることが分かっています。
【モース硬度7】クォーツ(水晶)
モース硬度が7の代表的な宝石はクォーツ(水晶)です。
クォーツもコランダムのように色によって宝石名が異なります。例えば紫水晶はアメジスト、黄水晶はシトリン、紅水晶はローズクォーツと呼ばれます。
ルチルという金線が含まれるルチルクォーツや、煙水晶と呼ばれるスモーキークォーツも同じくクォーツです。
また、クォーツ以外にトルマリンや翡翠も同じモース硬度7になります。
モース硬度7付近が宝石としては硬い分類になってきます。
【モース硬度6】オパール
モース硬度6近くになると、カッターで傷が付くか付かないか位の硬さになってきます。モース硬度6の宝石として代表的なオパールは、他の宝石と違い有機物から出来ているため、乾燥に弱いという特性があります。
ラピスラズリやターコイズもモース硬度6の宝石です。
【モース硬度5】 アパタイト
モース硬度5の宝石としてはアパタイト(燐灰石)やオブシディアン(黒曜石)があります。
あまり宝石としての流通は多くないですが、パワーストーンなどでも人気のある宝石です。
アパタイトはグリーン・ブルー系で、黒曜石は名前の通り黒や灰色系が多い宝石です。
オブシディアン(黒曜石)は旧石器時代や縄文時代の道具として広く使用され、丁度良い硬さだったことが伺えますね。
【モース硬度4】 蛍石
モース硬度4の代表的な宝石はフローライトです。蛍石とも呼ばれ、蛍のように暗いところで光る蛍光生を持っていることがある面白い石です。
他のモース硬度4の宝石としては、クレオパトラがアイシャドーにしていたという伝説を持つマラカイト(孔雀石)があります。
硬度4になると傷は簡単につくので、砕いたり加工しやすかったのかもしれませんね!
また、フローライトは劈開の性質を持っていて、割れやすいので注意が必要です。
【モース硬度3】方解石
モース硬度3の代表的なものとして方解石があります。大理石と言った方がイメージしやすいかもしれませんね。
成分は炭酸カルシウムで、加工のしやすさからインテリアによく使われています。
割れやすい性質のため、アクセサリーとしてはあまり向きません。
カルサイトという宝石名があり、パワーストーンとして市販されていますが身に着ける際はお取扱いに注意しましょう。
【モース硬度2】石膏
モース硬度2になると爪と同程度なので、かなり硬度が小さくなってきます。
ギブスや建材に使用される石膏がモース硬度2、岩塩や琥珀(アンバー)がモース硬度2.5というとイメージしやすいでしょうか。
宝石として琥珀は流通も多いですが、とても傷つきやすいので注意が必要です。
【モース硬度1】タルク
モース硬度の中でもっとも小さい数値の石はタルク(滑石)です。
この滑石を使ってコンクリートに白く絵や字を書いてる子供たちをよく見かけますね。
工業利用されることの方が多く、ベビーパウダーやファンデーションとして使用されています。
さいごに
大切なジュエリーのモース硬度を知れば、もっと丁寧に長く身に着けていけそうですね!
保管するときも、モース硬度の異なる宝石を一緒にしまうと傷つけてしまうので、所有している宝石のモース硬度はぜひ覚えておきましょう。