連載企画!職人インタビュー【技と想いのバトン】第6弾 「記憶や時間と向き合う仕事」
ジュエリーを作る人ってどんな人?

ajourの使命は、大切なジュエリーをお預かりし、蘇らせること。
その使命を最も身近で感じ、想いをかたちにしているのが、ジュエリー職人です。
本連載では、そんなajourのクラフトマンたちの想いや、職人になったきっかけ、そして普段身に着けているお気に入りのジュエリーなどをご紹介します。
第6回目は、ジュエリー職人歴28年の柴さん。
ジュエリー職人として歩みを続けてきた、ベテラン職人のこれまでの道のりをご紹介いたします。
これまでの歩み
ジュエリー職人としての原点

柴さんは、在籍するジュエリー職人の中で、最も社歴が長いベテランです。
もともとお父様が溶接業などを営んでおり、その影響もあって、幼い頃からモノづくりに触れる機会が多かったそうです。
細かい作業や手を動かすことが好きで、幼少期から自然と“作ること”に親しんできました。
将来はデスクワークよりも、現場に立ち、何かを生み出す仕事のほうが自分には向いている――
中学生の頃には、すでにそう感じていたといいます。
また、伝統のあるものづくり文化にも強い関心を持っていたことから、将来を見据えて東京都立工芸高等学校 アートクラフト科へ進学。
鍛金や鋳造など、金属加工の基礎を幅広く学びました。
「どんな職人になりたいか」と向き合った就職活動

高校卒業後は、できるだけ多くの経験を積み本格的にジュエリー職人を目指したいと考え、大手企業などを視野に入れて就職活動を行っていました。
しかし、会社説明を聞く中で生産効率を重視する企業が多く、同じ作業を繰り返す分業制の環境には、正直なところあまり魅力を感じられなかったといいます。
そんな中、現在ajourを運営するオリエント4C'sの会社見学を通して、会社の考え方や多能工として幅広く技術を身につけられる仕事の在り方に触れ、強く心を惹かれました。
「ここなら、職人として面白い経験ができそうだと思ったんです。」そう当時を振り返り語ってくれました。
ジュエリー職人としての想い
お客さまの声から、見えてきたもの

柴さんは現在、全国を飛び回り、各地の催事で活躍しています。
職人来店催事イベントでは、通常であればお日にちをいただきお預かりして行う修理を、その場でジュエリーを拝見し、加工まで行うというスタイルで対応しています。
当日お持ち込みいただいたジュエリーに対して、瞬時に最適な提案を行い、確かな技術で仕上げる。
この仕事は、幅広い知識と、数多くのアイテムに触れてきた経験がなければ成り立ちません。
もちろん、この仕事を職人としてデビューしてすぐに任されたわけではありません。
社内で約10年以上、さまざまな経験を積み重ね、30歳前後になってから、全国の催事に呼ばれるようになったといいます。
「この経験がなければ、今でもこんなに熱意を持って仕事に向き合えていたかは分からないですね。」
お客様の反応を直接受け取るようになったことで、仕事への向き合い方は大きく変わりました。
「視野が広がりましたし、何より、やりがいとモチベーションにつながりました。」
ジュエリーの先にあるもの

今では、お客様からのご指名や、告知を見て柴さんを目がけて足を運んでくださる方もいるそうです。
そうした反応一つひとつが、とてもありがたいと感じているといいます。
そんな柴さんに、これまでで一番印象に残っているお客様とのやり取りを聞いてみました。
あるとき、仕上がったジュエリーをお見せした瞬間、感動して涙を流されたお客様がいたそうです。
それほどまでに思い出が詰まったアイテムを、再び身に着けられる形に蘇らせることができたことは、
柴さんにとっても忘れられない経験になりました。
大切にしてきたジュエリーが、もう一度輝きを取り戻した喜びを、強く感じた瞬間だったといいます。
「モノに対する想いは、本当に大切にしなければいけないと実感しました。」
そう語る柴さんの姿からは、ジュエリーの先にある時間や記憶までも受け止めながら仕事に向き合ってきた年月が伝わってきました。
当たり前を守り抜くことで「信頼」と「感動」が生まれる

柴さんは、一からクリエイティブな発想を生み出すタイプではないと自ら語ります。
それよりも大切にしているのは、お客様の想いをきちんと汲み取ること。
最適な方法で、当たり前のクオリティを、当たり前に、完璧な形で仕上げること。
そして、大切なものを、確かな状態でお客様の手元へ戻すことです。
「当たり前のことですが、プロの手がなければ成り立たない仕事だと思っています。」
その言葉の裏には、一つひとつの判断に責任を背負い、決して手を抜かずに向き合ってきた時間があります。
確かな技術で大切なものを守り抜く。
柴さんの仕事には、そうした職人としての覚悟がはっきりと刻まれていました。
職人のこぼれ話
もしも別の職人になるとしたら?

「感動を与える仕事には、ずっと惹かれてきました。」
柴さんが挙げてくれたのは、花火職人と鍛冶刀(日本刀の職人)です。
一瞬で人の心をつかみ、記憶に残る光景を生み出す花火。
そして、研ぎや形成に長い時間をかけて生み出される刀。
どちらにも共通しているのは、“プロの手”と長い時間をかけて受け継がれてきた伝統の技でした。
実は柴さんのご実家には、先祖代々受け継がれてきた守り刀があり、それが伝統あるものづくりへの想いをより深めるきっかけにもなっていたそうです。
とても奥深い世界ではあるものの、需要の少なさもありその道を選ぶことはありませんでした。
それでも、感動を届けたいという気持ちや伝統ある技に敬意を払う姿勢は、今の仕事にも自然と重なっているように感じられます。
職人のMy Favorite Jewelry

身に着けているジュエリーは、約20年前に購入したもの。
同じブランドで揃えており、今も変わらず身に着け続けているといいます。
「これを自分で作るのは大変だな、と思います。それだけ手間がかかっているんですよね。」
職人という立場だからこそ、そのデザインに込められた労力や完成度をより深く感じ取っているようでした。
編集後記(社内プレス担当より)
柴さんの仕事から感じたのは、積み重ねてきた経験と判断が一つひとつの仕上がりに確実に表れているということでした。
お客様の想いを受け止め、最適な方法を選び、責任を持って手を動かす。
その積み重ねが、多くの信頼へとつながっています。
人の記憶や時間が重なるジュエリーと向き合う仕事に、柴さんの誇りが、はっきりと感じられました。