連載企画!職人インタビュー【技と想いのバトン】第7弾 「挑戦を重ねるクラフトマンでありたい」
ジュエリーを作る人ってどんな人?

ajourの使命は、大切なジュエリーをお預かりし、蘇らせること。
その使命を最も身近で感じ、想いをかたちにしているのが、ジュエリー職人です。
本連載では、そんなajourのクラフトマンたちの想いや、職人になったきっかけ、そして普段身に着けているお気に入りのジュエリーなどをご紹介します。
第7回目は、ジュエリー職人歴23年、
製造部と生産管理部の責任者を務めている種邑さん。
現場の最前線で技術と組織の両方を支える存在です。
これまでの歩みや仕事についてご紹介いたします。
「手に職」の憧れは幼い頃から。

種邑さんのご実家はオートバイの修理業などを営んでおり、幼い頃から工具の音などが身近にある環境で育ちました。
作業場でお父さまが黙々と手を動かし、壊れたものが再び動き出す瞬間を何度も見てきたといいます。
「手を動かして何かを直したり作ったりする姿が純粋にかっこいいなと思っていました。」
自然と“手に職をつける”ということが自分の中で憧れとなっていたと語ってくれました。
自由な環境で見つけた自分らしさ

高校進学を考え始めた頃、知人との何気ない会話の中で、都立工芸高等学校という存在を知ります。
ものづくりを専門に学べる学校があると聞き、興味を持って見学へ足を運びました。
校内に入ると、そこには思い思いに手を動かし、自分の表現に向き合う生徒たちの姿がありました。
「こんなに好きなことに夢中になっている人たちがいるんだ、と衝撃を受けました」
自由で伸びやかな空気に強く惹かれ、「ここなら自分らしくやりたいことを学べそうだ」と進学を決意します。
振り返ると、高校に入学する前から革でブレスレットを作ったり、金属パーツを組み合わせてアクセサリーを作ったりと、ものづくりへの強い関心と探究心を持っていました。
素材に触れ、工夫を重ねる時間そのものが楽しかったといいます。
身近な環境の中で育まれた興味と情熱の積み重ねが、現在の歩みにつながっています。
技術を深め続けたいという想い

現在は難易度の高い石留め加工を担い、個性的な形状や取り扱いが難しい石の加工をジュエリー職人として手がけています。
加えて、製造部と生産管理部を統括する責任者として、メンバーの育成や管理体制の最適化、品質維持に至るまで、現場と組織の両面からものづくりを支えています。
職人としての技術について尋ねると、「技術には終わりがない」と語ります。
どのような依頼にも最適な提案ができる職人でありたいという想いのもと、これまで技術を磨き続けてきました。
しかし、展示会などで歴史的な作品や優れた技術に触れるたびに、技術の奥深さに刺激を受けるといいます。
そうした外部からの刺激を糧に、さらに職人としての奥行きを深めていきたいと語ってくれました。
夢はジュエリー職人の価値を高めること

ヨーロッパではジュエリー職人の社会的地位が高く評価されていることに触れ、日本でもジュエリー職人という仕事の価値観を変えていきたいと種邑さんは語ります。
日本のジュエリー業界は、一つの工程を専門的に担う分業制が主流であり、1から10までのすべての工程を高いレベルで担える職人はごく一部だといいます。
限られた作業だけをこなす働き方が今の時代に本当に合っているのかを考えるようになり、ジュエリー職人の育成について方針を変えることにこれまで力を入れてきました。
言われたことをただこなす職人ではなく、お客様のご要望に柔軟に対応ができ、おひとりおひとりに対して最適なご提案ができることこそが、スペシャリストなジュエリー職人だと考えています。
そして、そうしたスペシャリストなジュエリー職人を輩出していくことが、お客さま一人ひとりの感動体験を増やすことにつながると信じています。
職人の数が減少していくと言われる今の時代だからこそ、ものづくりに携わる人が誇りを持って働ける環境をつくっていきたい。——
そんな想いを胸に、日々チームづくりに向き合っています。
想いを預かるという責任

職人来場イベントでは、これまで多くのお客さまと直接向き合ってきました。
なかでも強く印象に残っているのは、亡くなられた奥さまとのマリッジリングを持参されたお客さまのこと。
お持ちいただいた二つのリングを離れない仕様のペンダントにすることをご提案し、その日のうちに加工してお渡しした経験があるといいます。
完成したペンダントを手に取ったときのお客さまの表情が、今も忘れられないと語ります。
「嬉しい、だけでは言い表せない表情でした。これまでの時間や思い出が一気によみがえっているような、いろいろな情景が浮かんでいるように感じました」
あの瞬間に実感したのは、ジュエリーには人の想いを宿し、つなぎとめる力があるということでした。
ただ美しいものをつくるのではなく、そこに込められた記憶や感情ごと大切にお預かりする。
そんな想いを胸に、今日も一つひとつの仕事に向き合っています。
職人のこぼれ話
もしも別の仕事をしていたら?
獣医や飼育員、学校の先生に興味があったといいます。
幼いころから人の感情を支える仕事に魅力を感じていたそうです。
「誰かの人生の大切な瞬間に関わる仕事がしたかったのかもしれません」と語ってくれました。
職人のMy Favorite Jewelry

身につけているジュエリー(リング、ブレスレット)は、すべて自ら手がけたものだそうです。
純粋にご自身が「かっこいい!」と思えるデザインに仕上がったものを、日常の中でお気に入りとして身につけているのだとか。
職人として技術を磨き、挑戦を重ねる中で生まれたかたち。
それぞれのアイテムがいまの自分を映すピースのような存在なのかもしれません。
そして薬指には、奥さまとお揃いの結婚指輪。
華やかさと個性をあわせ持つデザインが、自然と目を引きます。
二人らしさを大切にした、特別な一本なのだとか。
編集後記
技術者としての探究心と、責任者としての冷静な視点。
その両方を持ち合わせているのが種邑さんの印象でした。
ジュエリーを通じて人の感情が動く瞬間に立ち会える仕事の尊さを改めて感じる取材となりました。
これからも技術と想いをつなぐ存在として、現場を支えていかれるのだろうと感じます。